東京地方裁判所 昭和60年(ワ)9604号 判決 1988年2月26日
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
三 本件につき当裁判所が昭和六〇年八月一〇日にした強制執行停止決定(同年(モ)第一一五九一号)は、これを取り消す。
四 この判決は、前項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告の原告らに対する東京地方裁判所昭和五五年(ワ)第八六一六号事件の和解調書につき、同裁判所書記官が昭和六〇年七月二三日に付与した各執行文(以下、「本件執行文」という。)の付された右和解調書の正本に基づく強制執行は、いずれもこれを許さない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文一、二項と同旨
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 本訴被告を原告、本訴原告株式会社アートネイチヤーを被告とする東京地方裁判所昭和五五年(ワ)第八六一六号損害賠償請求事件について、昭和五九年五月一一日、原告株式会社アートネイチヤー関西ほか一〇名を利害関係人として関与させたうえで、別紙記載の和解条項(以下、「本件和解条項」という。)のとおりの裁判上の和解が成立した。
2 被告は、昭和六〇年七月二三日、東京地方裁判所書記官に対し、原告株式会社アートネイチヤー関西において、本件和解条項第一項に違反する事実があったので、同条項第二項の条件が成就されたとして、原告らに対する執行文の付与を申請し、同日、同裁判所書記官は、本件執行文を付与した。
3 しかしながら、右の条件は成就していないので、本件執行文が付された右和解調書の正本の執行力の排除を求める。
二 請求の原因に対する認否
請求の原因1及び2の事実は認め、同3は争う。
三 抗弁
1 本件和解条項第一項には、原告らが、本件和解条項添付の第一及び第二物件目録記載の部分かつら(以下、「侵害品」という。)を製造、販売しない旨の記載があり、この侵害品は、同各目録記載のとおり、ピンが櫛歯状に付いているストッパー(以下、「櫛歯ピン」という。)が付着していることを特徴とする。
2 訴外永田健一は、被告の大阪地区の広告担当者である訴外杉本信一の依頼に基づき、昭和六〇年三月八日、原告株式会社アートネイチヤー関西本社において、同社との間で、価格金四六万円、うち金二三万円を同月末日までに、残額をかつら装着日に支払う旨の、ストッパー付部分かつらの購入契約を締結した。
3 永田は、右かつらの装着日である同年五月七日、原告株式会社アートネイチヤー関西を訪れたところ、永田の注文品として、担当者から示された部分かつらは、櫛歯ピンの付着したもの(検乙第一号証)、すなわち侵害品そのものであったので、これを装着してもらって帰宅し、その後、前記杉本を介してこれを被告に引き渡した。
4 以上のとおり、原告株式会社アートネイチヤー関西が、侵害品を販売したことによって、本件和解条項第二項の条件が成就したものであるから、本件執行文の付与は相当である。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1及び2の事実は認める。
2 同3の事実は否認する。原告株式会社アートネイチヤー関西が永田に販売した部分かつらに付着していたストッパーは、3Sピンと称しているもの(以下、「3Sピン」という。)であって、櫛歯ピンではない。なお、検乙第一号証の部分かつらが本件和解条項第一項にいう「部分かつら」と同一であることは認める。
3 同4は争う。
第三 証拠(省略)
(別紙)
和解条項
一 被告及び利害関係人ら(以下、「被告ら」という。)は、本日以後別紙目録記載の「部分かつら」の製造販売をしない。
二 被告らが前項に違反した場合には、連帯して原告に対し、違約金として金一〇〇〇万円を支払う。
三 被告らは、連帯して原告に対し、本件和解金として、金三〇〇万円を支払うこととし、これを昭和五九年六月末日限り、原告訴訟代理人事務所(東京都港区赤坂二丁目二番二一号 永田町法曹ビル四〇二号)宛持参又は送金して支払う。
四 被告は、昭和五九年五月末日限り、原告及び被告間の東京高等裁判所昭和五八年(行ケ)第二四一号特許無効審決取消請求事件を取り下げる。
五 原告は、その余の請求を放棄する。
六 原告及び被告らは、本件に関し、本和解条項に定める他何等の債権債務のないことを相互に確認する。
七 訴訟費用は各自の負担とする。
第一物件目録
被申請人商品
(検甲第一号証の別紙図面)
<省略>
第二物件目録
被申請人商品
(検甲第二号証の別紙図面)
<省略>